ごあいさつ

総合技術部長 立川 康人

総合技術部 部長

 令和5年4月1日より工学研究科長・工学部長を拝命するとともに総合技術部長を務めています。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

 私は降雨流出現象の予測と洪水被害の防止・軽減に関する技術開発を専門分野としています。平成8年4月から平成19年3月までの11年間、京都大学防災研究所に勤務していた当時、河川に関する現地観測や災害が発生した場合の現地調査を、教員と技術職員、学生とで協力して実施していました。現地観測では、滋賀県の大戸川流域や野洲川流域での気象・水文観測、水害調査では、平成12年9月の東海豪雨や平成16年7月の福井豪雨、平成16年10月の台風23号による由良川や円山川での大洪水での現地水害調査が記憶に残っています。現地観測や現地調査を効果的に進めるためには、有用なデータを取得するための計画と準備、安全を最大限考慮した現地での調査活動、万が一に備えた危機管理対応が必須となります。豊富な経験を有する技術職員による支援は、こうした現地での研究活動になくてはならないものでした。防災研究所にいた当時は、技術職員の協力を得てリアルタイム洪水予測システムの開発も行っていました。研究室で開発した洪水予測システムを実時間で稼働させ、その適用性をリアルタイムで確認して洪水予測システムの精度向上に活かすことを目的としていました。このように、観測・実験の支援はもとより、情報ネットワークを利用した教育・研究支援は技術職員の重要な業務であり、技術を通して大学の教育・研究活動になくてはならない役割を担っています。

 技術職員が有する豊富な現場経験と現場経験に裏付けられた知識、それから導かれる知恵、これらは京都大学の財産と考えます。私はこの財産からずいぶんと恩恵を受けました。これらの財産がより一層、教育・研究に活かされ、実験や観測の新たなアイデアが生まれ、新たな研究成果に結びつくような好循環を形成する環境を整備していく必要があります。

 実験や観測、それらから得られたデータの適切な保存と管理は、科学・技術を適切に進展させるためになくてはなりません。技術面において、実験機器や観測機器はますます高度化して専門化しており、情報ネットワークと一体となった技術開発とそれらを用いた課題解決が要請されています。研究公正において、実験や観測で得たデータを適切に扱い、保存し管理することは大学の教育・研究活動の根幹であり、研究データを管理する枠組みや体制を適切に運営していかねばなりません。実験や観測を通して研究データを取得する教育・研究の最前線に技術職員はあります。技術職員と総合技術部は教育・研究の支援業務に留まらず、教員や事務職員の皆様方とともに、技術を通して教育・研究の現場の根幹的な役割を担うことが求められています。

 今後とも、技術職員および総合技術部へのご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。